長い間いたような気がするけど、樹といたのはほんの数週間。
たったそれだけなのに、樹はあたしのなかにたくさん何かを残していた。
この世界が異世界だと言われてから数週間。
またあの場所からあたしの元いた世界に戻る。
あたしは一度も立ち止まる事なく、鳥居を潜り抜け、後ろを振り替えることなく家についた。
振り返らなかったのは意地だった。あんな風に出てきたのだから。
今まで振り返らなくてもよかったはずなのに、玄関のドアに手を伸ばそうとすると急に不安になってきた。
「……くそっ、」
どうしようもない気持ちが汚い言葉となって溢れてくる。
大きく息を吸い込んだあたしは何も言わず玄関から入った。