side 安藤
――――――
――――――――
樹が戻ってくるまであたしはずっと店から動けないでいた。
だからガラガラという店のドアが開く音を聞いて、少し安心した。
――帰ってきた
ただそれだけで、彼はあたしに安心を与える。
でも、樹の様子がおかしい。
「くず……?」
“くずって呼ぶな”
そう返してくれることを期待していたのに、彼から返ってきたのは、苦しそうな息切れだけ。
「えっ?どうしたの!ちょっと」
あたしの顔を見たとたん、樹はその場で膝をついてしまった。
急いで駆け寄り、樹の額に手を当てれば体温は普通。
「え?熱じゃない?」
「だい、じょうぶだ」
全然大丈夫じゃない。
この前だって、体調悪そうにしていた。
「ねぇ、樹、どうしたの?おかしいよ、最近。お願いだから教えてよ……」
そう言えば樹は苦しそうにしながらも、あたしを睨んだ。
「安藤には関係ない。口出しするな」
妙にはっきりした物言いに、ついつい腹がたってしまった。
そして言ってしまった。