「はぁ、はぁ……」


息が切れる。


確実に彼の傷を治していく。


そして元気になっていく彼に反比例するように命が削られていく樹。





彼の傷を、あとは自然治癒力で治せる位まで治すと、樹は治す手を止めた。


「はぁ、はぁ……っ、」


彼の痛みを引き受けたかのように自分の体が痛い。


動かない体に鞭を打ち、樹は立ち上がった。


そして何もなかったように、平然と病室を出た。


樹が出てきたと同時に、彼の姉が飛びつくように駆け寄る。


「あとは自然治癒力でいけるはずです」


その言葉を聞いた瞬間、彼女はすごい勢いで病室に駆け込んだ。


そして、傷が薄くなり、表情も穏やかになった弟を見て安心したのか、大きな泣き声が聞こえてきた。


「……報酬なんていらねぇんだよ」


金が欲しくてこの仕事をしているわけではなかった。


でも樹の呟きは彼の姉には届いていないだろう。


樹は気付かれる前に病室から離れた。