薬師 ―君の傷―




突然後ろから聞こえてきた声に、あたしは寒気がした。


外の寒さのせいではない違う何かを感じ取り、あたしは寒気がした。


「……あ、んた。誰……?」



とぎれとぎれになる声に、寒気の原因はほほ笑みながら答えた。




「俺は薬師。どんな傷でも治す万能薬だ」




意味のわからないことを言った。



こいつの正体は薬師でした、はいそうですか、なんてなるはずもなくて、ただ寒気から身を守るために肩を抱いた。


「君は傷を負っている」


だめだ。


完全に危ない。


いろんな意味で。


「あたしは怪我してないよ。だから大丈夫。帰ります」



「帰るところなんてあるの?」





寒気の原因である薬師と名乗る男の言葉に、引き返そうとしていた足が思わずとまった。



「君の傷は目に見えない。心の奥底はズタズタでボロボロだ」





この時初めて彼の目を見た。



なんでも見透かされているような、そんな気にさせる目を彼はしていた。