彼女の足は病院の中に入っても止まらず、俺はゴールの見えないことに疲れを感じ始めていた。




「ここです……」


彼女が立ち止まったのは普通の病室の前。


正直、集中治療室みたいところにつれていかれるのかと思っていた。


それを察したのか、彼女は苦笑いを零しながら言った。


「もうできることはない、って……」


「あぁ、」


“もうできることはない”


その言葉がどれほど彼女の心をズタズタに切り裂いたのだろうか。


きっと計り知れない。


「お願いします、私には、もうどうしたらいいのか、分からないんです……」


彼女は目にいっぱい涙をためている。


そしてそれを零さないように歯を食い縛っていた。


「わかりました」


病室に入ろうと一歩踏み出した。


彼女はついてこようとしたので、


「俺一人で」


そう言えば不安そうにしながらも頷いてくれた。




頼む、持ってくれ……




俺に言ったのか、はたまた彼女の弟に言ったのか。


どちらにも言える言葉を、俺は呟くしかなかった。