その日の晩ご飯の席で、お姉さんの背中の牡丹が綺麗に消えた、という報告を受けた。
「……そっか」
綺麗だったのになぁ。もったいない。
そう思っていたのが顔に出ていたのか、樹は苦笑いで言った。
「あの人にどんな事情があろうとも俺には関係ないよ。ただ、“無かったことにする”だけだ」
無かったことにする
そんな寂しい言葉を言ったのは樹本人なのに、樹が一番寂しそうな顔をした。
――母さんと同じだ
あたしはふと思い出した。
あたしに向かって“産まなきゃよかった”と怒鳴る母の顔を。
そしてそのあと“しまった”という顔をする母を。
自分の言動に一喜一憂する。
「理由なんて聞きたくない」
初めて耳にした樹の消えてしまいそうな声。
少しだけ嫌な予感がした。
――――――――――変化