スーパーに着くと樹がかごを持ってくれた。


そんなさりげない優しさにもあたしはどんな対応をしたらいいのかわからなくなる。


「あたし持つよ」


「いいの。作ってもらうお礼みたいなもんだし」


樹はそう言うけど、ご飯を作るのは楽しいんだから別にお礼を言われるようなことではない。


「こういうときは素直にありがとうって言っとけばいいよ」


「ふーん。ありがとう」


よくわからないけど、それでいいらしい。


「よし、肉行くぞ、肉」


「うん」


かごを持って元気よく歩きだした樹。


「樹、そっちじゃない」


「……わざとだし」


スーパーに来たことはないのだろうか。


お肉売場とは逆方向に歩き始めてしまった。


あたしが注意すると照れたように樹はそそくさと方向転換した。


「とんかつー」


歩いていても樹は楽しそうだ。