お母さんの所には帰りたくなかった。
帰ったってまた口論になって、お互いに傷つけあう。
親子だから。
親子だけど、あたしたちは一緒にいるべきじゃない。
「ただいま」
「おかえり」
店の玄関から入れば樹が迎えてくれた。
「体調は?」
「いつも通りだよ」
少し笑った顔はいつも通りだった。
「……書庫片付けてくるね」
何を言えばいいのか分からなくて、あたしの足は自然を書庫に向いていた。
「あぁ、今日はもういいからさ、一緒に夕飯の買い物行こう」
めんどくさそうに、立ちながら樹は言った。
「二人で?」
今までこんなこと無かったから、あたしは驚いてしまった。
「他に誰がいんの?」
クスクスと笑う樹を見てあたしは少し恥ずかしくなった。
誰かと買い物にいくのも初めてだった。
樹はあたしにたくさんの初めてをくれる。
樹のことは気になる。
でも今は蓮が言うように早いのかもしれない。
そのままにしておいたほうがいいのかもしれない。
今はそう思えた。


