「そっか……」
怒ればいいのに。
何で隠すの?って怒ればいい。
なのに、やっぱり境界線をこえられない。
「ごめんね。俺からはあんまり言えない」
全部言い訳のように聞こえる。
樹も蓮も、お母さんも。
みんなしてあたしをのけ者にする。
「あたし、帰るね」
「送って行こうか?」
「ううん、大丈夫」
きっと弱々しい笑みだっただろう。
でも蓮はそれに深く突っ込まず、あたしに手を振ってくれた。
“俺からは何も言えない”か。
それはいつか樹があたしに言ってくれるということだろうか。
「……もやもや」
蓮に会う前に心の片隅に居座っていたもやもやは、蓮との会話によって、心を支配するものに変わってしまった。
どれだけ悩んでも、あたしには帰る場所は樹の所しかないんだ。


