「佳奈ちゃんはわかりやすいなぁ」
「え?」
にやにやと笑いながら蓮は呟いた。
「佳奈ちゃんのもやもやの正体、当ててあげようか」
「……わかるわけないじゃん」
わかるわけないし、分かってほしくない。
見透かされているなんてのは一番気味が悪い。
「樹のことだね」
それくらいは分かるだろう。
こっちにきて関わったのは樹と蓮くらいだ。
あとの人、つまり客として来た人は、その人について悩むなんてほど関わってはいない。
「様子、おかしいんじゃないの?」
「何で……」
まるで蓮はすべて知っているような口振りだ。
「ちなみに聞くけどいつから?何がきっかけ?」
緊張感のない笑顔から、真顔になっていた蓮に少しびびったが、質問には答えるために考えてみる。
「あの日だよ。背中に牡丹の刺青が入ったお姉さんがきてから」
それを聞いた蓮は一瞬驚いた顔をした。しかしその表情はほんの一瞬だった。
すぐに真剣な顔に戻って何かを考えはじめてしまった。
わたしは道の真ん中で、取り残された気分だ。


