その後、彼女がベッドに横になったので樹を呼びに行った。


「安藤、クッキー持ってきて」


さっきまでの真剣な顔とはうって変わっていつもの樹に戻っていた。


「……分かった」


ただ、あたしにはそれが、作られたような、無理をしているような……。
そんな風に見えた。




クッキーを持って樹の所へ戻ると、樹はそれを彼女に勧めた。


「これ、こいつが作ったんですけど、うまいから食べてください」


敬語とタメ口の間をうろうろしたような口調。


敬語を使おうと努力しているみたいだ。


「安藤、悪いけど俺が呼ぶまで書庫の片付けしてくれるか?」


「あ、うん」


あたしは樹の言葉を受け入れるしかない。


最後にもう一度彼女の背中に刻み付けられている牡丹の花を見た後、あたしは部屋を出ていった。






その後、あたしが呼ばれたのは治療が終わって、彼女が帰ってしばらくした後だった。