クッキーが焼き上がったころ、樹がいきなり真剣な顔で立ち上がった。
「どうしたの?」
「客の到着だ」
「え?」
どうしてわかったのかわからないが、樹がこんなに真剣な顔をしていることはかなり珍しい。
「行くぞ」
「う、うん……」
いつもなら文句の一言や二言言ってしまうのに、今の樹には言葉を返せなかった。
黙ってついていくとやはりお客さんは来ていた。
きれいなお姉さん。
「いらっしゃい」
樹がそう言うと彼女は無言で頭を下げた。
「一応確認させてもらいます。あなたは背中にある大きなものを取り除きたい。これでいいですね?」
「……はい」
深刻に、真剣に話す2人に思わず息を止めていた。
「では上半身の服を脱いでそのベッドの上で寝ていてください」
そう言うと樹はあたしの方をむき小さな声で言った。
「いろいろ話聞いてやって」
今まで樹が治療の前に準備をしたことはない。
あらかた服を脱がなければならない彼女に気を遣ったのだろう。
「……お手伝いします」
あたしは恐る恐る彼女に声をかけた。


