店をあけない、とは言ったが何時にその“お客さん”とやらが来るのかは聞いていない。
いつもなら店を開けてボーっとしている時間なのだが、樹はまだのんびりとしている。
「いつ来るの?」
「昼前くらいじゃない?」
今はまだ九時過ぎだ。
まぁ店を開けたって午前中は客なんて来ないのだが……。
「書庫の片付けでもしようかな……」
そこで佳奈は想像してみた。樹が蓮なしで1人で書庫の片付けをしているところを。
…………………。
「やめて。あたしがお菓子でも作るから味見役でもしてて」
彼を一人にするのは危険だ。
せっかく片付けた本を散らかしかねない。
「……?まぁ、いいけど」
樹は不思議そうな顔をしていたが納得してくれ、あたしはそれにほっとした。
「お菓子つくんの?」
「うん。お客さんにでも出せばいいかな、って思ってね」
何気ない一言だった。
なのに、
「……」
樹が急に真面目な顔をして黙るからあたしは“しまった”と思って、一気に嫌な汗をかいた。
「いや、ダメならあたしが食べるんだけどね」
焦って付け足した言葉が震えた。


