食事当番はずっと佳奈のままだ。
一度樹に包丁を持たせたがあのまま止めなかったら樹の指はなくなっていたかもしれないと思わせるほど怖かった。
もうあたしがやった方が早い。
樹に家事は無理だ。
樹は黙って小学生の傷を治していればいいんだ。
うん、そうだ。
「それにしても何で毎朝怒られてるんだ?俺は」
「起きないからだよ」
「起きてるじゃん」
「……そのまま永眠させてあげようか?」
「遠慮しときます」
黙ってご飯食べてればいいんだよ。
「そういえば今日は予約入ってるから店は開けない」
ご飯を頬張っていた樹がふと思い出したように言った。
「予約?」
そんな制度あるのか?こんないい加減な店に。
「あぁ。話を聞いたかぎりだと時間がどれくらいかかるかわかんねぇから店は開けない」
「ふーん」
ここはあたしの店ではない。樹の店だ。
あたしがとやかく言う資格はないし、あたしは店のことに関しての樹は信頼できると思っている。
店のことに関しては。
ほかは信頼にも値しない、ただの不器用人間だ。


