あの日、蓮は佳奈に連絡先を教えていった。


『樹のことで知りたいことがあったら俺に連絡してねー』


最後までちゃらんぽらんな男だったような気がする。




あの日から早くも1週間がたった。


樹は毎日のように学校帰りの小学生の傷を治していく。


たまに女の子がくるとあたしに手伝いをさせる。


そして相変わらず書庫には本が溢れてる。


そんな変わらない毎日が、いつのまにかあたしの傷を癒していたのかもしれない。






「おいくず!さっさと起きろや」


樹は寝起きが悪い。半端なく悪い。


呼んでも起きない、ゆすっても起きない。


横で大音量で音楽をかけても寝返りを打つだけ。


最初はびびった。


思わず蓮に電話してしまうくらいに。


「佳奈ちゃんだー!もしかして樹が起きない?」


まるで見透かしたように蓮は笑いながら言った。


「そういうときは罵ってやればいいんだよ。そうしたらすっきりするでしょ?」


その方法ですっきりするのはあたしだ。


そして樹は最悪の寝起きだろうな。


そう思いながらも、罵るとのんびりと起きてくるから不思議だ。