外からは小学生の声が聞こえなくなっていた。


「そういえば何も貰ってなくない?」


さっきは本をもらう約束をしていたのに、今回はそんな会話を聞いていない。


「……あぁ、今回はいいんだ。あの子に、治療治療手伝ってもらったから」


「?」


意味が分からなかった。


「安藤はさ、楽しかっただろ?美樹ちゃんと話して」


「うん」


すごく楽しかった。


そしてすごく自分の孤独さを認識した。


「安藤の傷は特殊だから。俺にできることは限られてる。あの子と話したことは安藤にとってプラスだったよ」


だからいらないの。


そう満足そうに笑った樹に、思わずドキッとした。


「さ、どうせ客は来ないし書庫行くか」


「……だね」


入り口を見ても人がくる気配はない。


またあのホコリ臭い部屋に戻るのか……。


あの部屋が片付く頃にはあたしの傷は治っているだろうか。






――――――――――擦り傷