薬師 ―君の傷―




あたしはしてもらったことはないけれど、あたしが誰かにしてほしいと思ったことをこの子にしてあげたい。


そんな思いを胸にあたしは美樹ちゃんに笑顔を向けた。


あたしは母に笑顔を向けてもらったことなんて数える程だ。


「今日、何か楽しいことあった?あったあたしに聞かせてよ」


あたしは今日あったことを母に聞いてもらったことはない。


どれだけ聞いてほしいことがあっても、『今忙しいから』そう言って会話終了。


「…………、算数の教科書忘れたら、隣の席の子がみせてくれた」


長い間考えて答えてくれたことは、他人からしたらどうでもいいことかもしれない。


それでもあたしは楽しかった。


話を聞いていて、再確認させられた。あたしは、こうやって誰かに話を聞いて欲しかったのだ、と。


返事なんていらない。
相槌もいらない。


ただ、笑って『それはよかったね』って言ってくれる人がいてほしかったのだ。傍に。


「終わった。安藤ありがとう」


「あ、うん」


いつの間にか美樹ちゃんの治療は終わっていたみたいだ。


「熱くなかったか?」