ぼんやり廊下を歩いていたら、樹の今度ははっかりした声が聞こえてきた。
「早く!」
「はいはい」
佳奈は、ゆっくり歩いていたが早足に変えた。
「何の用?」
「ちょっとこいつと話しててくれねぇか?」
「は?」
樹の視線の先いたのは、泣き顔の小学生と思われる女の子。
「さっき転んだらしいんだけど、治療を怖がるんだよ。だから気を逸らしててくれ」
「あー、そういうことね」
佳奈は樹の話を理解したあと、女の子が座っているソファーの余っているスペースに腰掛けた。
「あたしは佳奈っていうの。君は?」
「……美樹」
何度も鼻をすすりながらも答えてくれた。
「そっか、美樹ちゃんか。転んだの?」
その問いにはコクンと頷いてくれた。
「痛かったよね。もう大丈夫だよ。このお兄ちゃんが綺麗に治してくれるからね」
「う、ん」
まだまだ完全に泣き止んではいないが、涙は止まりつつあるみたいだ。
「美樹ちゃんは何か得意な教科ある?」
「…………、国語、です」
決して慌てさせないで、急かすようなこともしない。


