薬師 ―君の傷―




ちょっと失礼だけど、樹は一人だと何もできないアホだから、“くず”って呼ぼう。


「うん、オッケー」


「じゃ、本の整理いきますか」


「はいよ」


とりあえず納得したあたしたちはまた黙って作業に戻った。


しばらくした時、遠くから樹の声が聞こえた。


「――だ、……って」


彼がいる場所からここまで結構離れているため声が聞こえにくい。


佳奈は大声で聞き返そうと息を吸った。


「手伝って、だって」


「え?」


今の聞こえたの?


「佳奈ちゃんに手伝ってほしいみたい。樹が呼んでるよ。手伝え!だって」


本気で聞こえていたらしい。


「よく聞こえたね」


「地獄耳だから」


「……」


こんなに笑顔が怖い人、絶対に敵にまわしたくない。


「……行って来る」


「いってらっしゃい」


笑顔で手を振る蓮に、佳奈は第一印象の訂正が必要だと思った。


チャラチャラしてそうから、敵にまわしてはいけない危ない地獄耳、とインプットし直した。


きっと樹も、うまいこと蓮の手のうえで転がされているんだ。


ってか遊ばれてるんだろうなぁ。