肌が少し変色することはありえるはずだ。
「ならいくぞー。熱かったら言えよ」
「大丈夫」
佳奈は思考回路を一時停止し、樹の治療を見ることにした。
樹は着ていた服の右腕を捲り上げ、集中するように大きく息を吸い、吐いた。
そして、ゆっくり少年の膝に手のひらを近付けていった。
別に何かを言われたわけではないのに、樹の集中が伝わってきて、佳奈も黙る。
「はい、終わり」
フゥーと息を吐いた後、樹の集中の糸は切れた。
少年の膝に手のひらを近付けていってからだいたい2分。
「ありがとう」
たったそれだけの時間で少年の膝の擦り傷は跡形もなく消えた。
まるで時が戻ったように。
「お代は何がいい?」
「本」
「わかった。また何か持ってくるよ」
まだ本を増やす気か。
「バイバイ」
「あぁ、」
少年が帰っていった後、樹はあたしの方をむいた。
「これで信じた?」
信じるも信じないもない。
「信じるしかないじゃない。あんなの見たら」
安藤佳奈、18歳。
この歳にしてファンタジー体験なう。


