「そっちの方が楽しそうなんだけど」


「俺らに掃除なんかできるとでも?」


朝は起きられない。
料理は作れない。


そんな樹と、その友達。


「思えない」


「だろ?」


そんな自信満々に言われても。


「言っとくけど、ここまでくるのに一年近くかかってるからな」


それも自慢できない。


ってか一年もやってるのに終わらないのかよ。


「……うん、あたしが掃除するよ」


手伝わそうかとも思ったが、手伝ってもらったら進まない気がする。


――――――
――――――――



自分で言うのもあれだけど、あたしは要領がいい。


いくら広いとはいえ、掃除用具一式が揃っているのだから、バンバン掃除が進む。


樹と蓮が二人がかりでやっていたものを一日で遣り遂げた。


「安藤、君はすばらしい」


「樹に言われても嬉しいと思えない」


「気にするな」


樹がそろそろ下校時間だからと、作業を中断して、店に戻った。


するとすぐにお客さんが表れた。


初めて見る樹の仕事。


これであたしの今いる場所がファンタジーな所かどうかがわかるんだ。