「俺の店の主な客は学校帰りの小学生だ」


あー、なるほど。


樹が、客が来るまでまだ時間があるといった訳がわかった。


今はまだ小学生の下校時間には早い。


「どこ行くの?」


樹と蓮は慣れた様子で店の奥に進んでいく。


「書庫」


書庫?この家には書庫なんてものがあるのか。


「樹のじいちゃんと父さんが本の虫でねー。集めまくったのはいいけど片付ける前に亡くなったんだ」


「迷惑な話だね」


「言っちゃうね」


「言っちゃうよ」


樹は気まずそうに黙っている。


「樹も犯人の一人なんだよ」


なるほど。


それで気まずそうにしているのか。


「それで増えすぎたからこうやって俺も手伝って整理してるんだ」


なんと迷惑な家系なんだよ。


「俺はじいちゃんたちと違って片付ける気はある」


だからマシかと聞かれればそうでもない。


「……ここだよー」


ついたのは一際大きな扉の前。


ちなみに店の一番奥。


「はい」


樹がいきなり渡してきたのはマスク。


「ホコリがな……」


そう言って自分もマスクをつけた。