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「お客さんきませんね」
開店から3時間。
未だ客は来ず。
薬師は診察用のソファで本を読んでいる。
「怪我が無いということはいいことだよ」
「そうだけど……」
これは商売になるのか、かなり怪しいくらいだ。
「商売にならなくない?」
「俺は諸事情から金は有り余ってんだ。だから金は別にいらない」
だったらあたしがここにいる必要もないような気がする。
その有り余る金で可愛い子を雇えばいい。
「……12時か。そろそろだ」
彼が腕時計を見て、若干嫌そうな顔をした。
何がそろそろなの?
そう聞こうとした瞬間、それは表れた。
「樹!」
満面の笑みで、とても楽しそうに誰かの名前を読んだ。
「蓮、静かに入ってこいっていつも言ってるだろ」
「はいはい」
全く聞いてないだろうな。
ってか
「いつき?」
「は?」
樹と呟いてみて、返事をしたのは薬師。
「あんた名前あったの?」
「そりゃな」


