おだてだって無駄だ。
「今日も安藤のつくるご飯は美味しい」
「いつもおいしいから」
機嫌をとられているのは丸分かりだ。
「はいそうですね」
「おい、棒読みだ」
こんなに話ながらご飯を食べたのは初めてだ。
初めて知った。
ご飯って誰かと食べるとおいしいんだね。
「さぁ、そろそろ店を開けるかな」
ご飯を食べた後、一度部屋に帰って準備をした後、なぜかあたしの部屋に戻ってきて彼は言った。
「開ければ?」
すると彼は残念そうな顔をした。
「何?」
「そこは、はいそうですね。先生!とかいってほしかった」
「他を当たれ」
そんなことのために部屋に来たのか。いい迷惑だな。
「まぁいいや。店開けるから下行くよー!」
「はいよ」
やっぱりあたしが手伝うのは決まっているらしい。
「これドアにかけてきて」
そういって渡されたのは、“営業中”と書かれた小さな看板。
これをドアノブにかけてこればいいらしい。
簡単な開店作業。
「今日も張り切って治していくかな」
彼が少し悲しそうに笑った。


