薬師 ―君の傷―




部屋の奥にある窓に近づき、窓をあけてみれば心地よい風が髪を揺らす。


「気持ちいい――…」


「だろ?」


「うわぁ!」


突然聞こえた声に驚いて変な声を出してしまった。


もちろん声の主は薬師なのだけれど……。


「いきなり入って来ないでよ」


「ノックしても気が付かなかったのは安藤だけど」


「……っ、それは、ごめん」


「まぁいいけどね」


むかつく。


その余裕そうな態度、すごくむかつく。


「この部屋、好きに使っていいよ。壊さなければ」


「壊さないから」


あたしを何だと思っているのか。


「その荷物なら手伝うまでも無さそうだね」


「……」


そうだけど、あらためて言われるとやっぱりむかつく。


「もう夕方だ。店はお終いにしてご飯にしようか」


「だれが作るの?」


「……」


無言であたしを指差す彼。
そして自分を指差し、確認するあたし。


「俺、料理作れないから」


作れるようには見えないけど。


「鍋食べたい」


「……はいはい」


あたしに拒否権はないんだった。