あたしが薬師を手伝う事に決めた後に、彼はとてつもないことを教えてくれた。
「あ、この場所は安藤の世界とは違う世界だから」
「は?」
何だ、なんでそんな、『今晩は晩ご飯いらないから』みたいなテンションですごいこといっちゃうのさ!
「つまり、違う世界。まぁ、生活には支障はない」
「そんなわけない」
支障がないわけないだろ。
この歳でファンタジー体験をするなんて……。
「信じてないねー」
「まぁね」
そんなこと、簡単に信じられるわけない。
「だよねー。俺もいきなりそんなこと言われたら言ったやつ往復ビンタしてる」
おい。
何であたしには言ったんだよ。
往復ビンタされたいの?
「見せてあげたいのはやまやまなんだけど、お客さんがいないからなぁ」
あたしは?
あたしはあんたの客ではないのか。
「とにかく、もう少し待ってろ。そんで待ってる間に引っ越せ」
「……あいよ」
もう何を言われても驚きはしない自信がある。