「あれ?」
鳥居がない……。
いつもの場所には鳥居はなかった。
「嘘でしょ……」
あの鳥居がなきゃ、私は樹のいる場所にいけない。
「嘘だ!こんなのありえない」
だって、樹は何も言ってなかったし、私はまだ樹に対価を払っていない。
「うそだぁ……」
さっきまで流していたのはうれし涙だったはずなのに、今流れてくるのは悲しい涙だ。
いつも鳥居があった場所はなんにもない場所になっていた。
鳥居を見つけるまでの見慣れた風景になっていた。
あっけない。そう思った。
やっと、見つけたって思った。私を認めてくれる人を。
私を受け入れてくれる人を。
そこに恋愛感情はきっとなかった。いや、あったかもしれない。でも私には愛なのかそうじゃないのか、それに区別をつけることはできなくて、ただただよくわからないけれど、会いたいという気持ちだけが残った。
もし対価が樹を失うことだと知っていた、私は母親と樹、どっちを選んだだろう。
きっと母さんだろう。
もし、樹を失うことを初めから知っていたのならば、私はこんなにも樹に会いたいと思うだろうか。
いや、思わないだろう。