「ということでここで俺の手伝いしろ」
どういうことだ。
なんの脈絡もない会話にあたしはほとほと呆れた。
「俺は君の傷をなおす、君は俺の手伝いをする。利害関係の成立だ」
「まず治してほしいなんて頼んでないんだけど」
冷たく言い放ったあたしに彼は面白そうに笑った。
「ここに付いてきた時点で君の心は傾いてるよ」
ドキッとした。
実際、そうだったから。
あたしはかなり傾いていた。
どうせ一人だし。
誰も心配しないし。
もう傷つかなくていいのなら、いっそ任せてしまおうか。
そう思っていたのは事実だったから。
「何も考えず、俺の思うとおりに動いてみるのも悪くないよ。楽になれるし」
彼の売り文句にあたしの心はどんどん“手伝う”方向に向かっている。
「……傷が治ったら、あたしは変わる?」
「さあ?それは君次第じゃない?」
不確かで、無責任な言葉。
それがとても魅力的に見えた。
「手伝うよ。だからあたしの傷を治して。あたしが変わるために」
「了解」