俺は涙をぬぐうこともせず、彼女のベッドの横にある小さなテーブルにジーパンのポケットから取り出した手紙をそっと置いた。
これは自分の限界を感じたときに安藤に向けて書いた手紙だ。
手紙という形に残るものを安藤に渡すのはちょっと気が引けた。自分のことなんて忘れて幸せになってほしいと思っているのに、まるで自分のことを忘れてほしくないという心の叫びのようだから。
しかし結局手紙にしてしまった。
それを置いた俺は彼女の体の上に手をかざした。
「さよなら、加奈」
―――――――――――治療
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