「だから俺にあんたの傷を、ください」
なんか俺変態みたいだな、なんて。
「そんなこと言われたら、あげないわけにはいかないわね。でも、これだけは覚えておいて」
母親みたいな顔をして、彼女は言う。
事実母親なのだけれど。
「あなたは背負わなくていい痛みを背負うことになるの。それはあなたが選んだことよ。誰にも言い訳なんてできないし、困っても誰も助けてなんてくれない」
「そんなことわかってますよ。後悔するくらいなら今の仕事やってませんよ。これはちゃんと「覚悟をもってこの仕事をしてるんです」
今まで俺にそんな言葉をかけてくれた人はいなかった。
だから少し胸が熱くなる。
「そう、ならいいのだけれど」
「とりあえずもう目をつぶってください」
「あと最後にもう一つ。あの子をお願いね」
俺は最後に笑顔で大きな嘘をつく。
「任せてください」


