薬師 ―君の傷―




いくらなんでも拒否権なしはひどい。


「でも……」


だめな理由を、断る理由を考えてみるけど何も思いつかなかった。


母さんはあたしが居なくなっても心配しないだろう。


夏休み中、遊ぶ相手もあたしにはいない。


何か約束があるわけでもない。


断る理由が全く思いつかないのだ。


「ほら、君はまたそうやって自分を傷つける」


少し優しい声。


その声に顔を上げれば彼とバッチリ目が合った。


そこではじめてゆっくり彼の容貌を見た。


金髪に近いふわふわの髪、引き込まれそうな真っ黒な目、通った鼻筋。


「(綺麗な顔)」


言葉には出さないけれど、彼の顔はとても整っていた。


「君は何かを考えるたびに“独り”を実感して傷つく」


そうだ、あたしは何かを考えるたびにあたしには誰も居ないことを実感させれる。


そして悲しくなる。


なんでも見透かすような彼の真っ黒な目は本当にあたしの心の奥を見ているようだ。




悲しいくらいに残酷だ。