薬師 ―君の傷―




「俺は他人の傷を自分の命と引き替えにして治すことができる」


ベッドにすわったままの安藤の母。


その顔がどんどん険しくなっていく。


「私の病気を治すのに、あなたが傷ついたら意味ないんじゃない?」


真剣に、けれどどこか楽しそうに。


「いいんです、俺はどうなっても」


俺はどうなってもいいから。だから突き放してしまった安藤が大事にしている人が元気になれば、それでいい。


「佳奈が大事にしている人が私のせいで傷つくのは嫌よ」


彼女の笑顔は俺の力を完全に拒絶していた。


この先俺が何を言っても、彼女は首を横には振らないだろう。


「分かりました。でも……安藤は、俺のことなんかどうでもいいはずですよ」


安藤の母の言葉を、一部だけ訂正した。


「そんなことないわ」


優しく笑う姿はまさしく母親のそれだった。