「すいません。俺が口を出すことではありませんでした」


素直に頭を下げた。だって初対面の見知らぬ男にこんなことを言われたら、たとえ女に言われたとしたって怒る。


「頭を、上げてください」


落ち着いた声が聞こえた。


「っえ、」


聞き間違えかと思わず聞き返してしまった。


「あなたの言っていることに間違いなんてないわ」


そう言って悲しそうに笑ったのだ。


その時、素直にすごいとおもった。


自分の非を素直に認められる人はなかなかいない。


「実は私も親に育児をしてもらった記憶がないんです」


いきなりのカミングアウトに俺は言葉を失った。


「生まなきゃよかったには、生んだってちゃんと育ててあげられないなら生まなきゃよかったっていう私自身の罪を含んでいるの」


「……」


なんて言ったらいいか分からなかった。


「でも、だからっていってそれを佳奈に言っていいわけないわよね」


自重気味に笑うその顔は少し安藤とは違った大人の顔だった。


「だから、罰が当たったの」


俺から視線を外し、窓の外を見た。