出されたお茶をそのままにして、あたしと樹は店を出た。
向う先はもちろん“私の世界”の病院。
またあの鳥居を通らなければならない。
そこでふと思った。
「ねぇ。樹ってあたしの世界に行けるの?」
「行けるよ」
なんか意外だ。
あたしの世界からは何か傷を抱えている人しかこちらの世界にはいけないのに、樹たちは何もなくてもあたしの世界に行くことができるんだ。
「そういえば、あたしは何を払えばいいの?」
「終わったらわかる」
突き放したような言い方に少しわだかまりを覚えたが、あたしはそのわだかまりをそのままにした。
―――――――――安藤の話