ソファーに座ったあたしに、樹はお茶を出した。
――本当に客なんだなぁ
お茶を出されたことで、樹から一線をひかれたような気になって、悲しくなる。
でも今はそんなことも言ってられない。
「で、依頼は?」
そうだった。
この男は客に対してろくに敬語も使えやしないんだった。
「私の、お母さんを助けてください」
樹があたしを客として扱うなら、あたしだってちゃんと客を演じようじゃないか――。
「……状況は?」
あたしの依頼に驚いた様子も見せず、樹は淡々と業務を進めていく。
「母さんが死にそうなんだよ……」
頭によぎった母さんの苦しそうな顔。
「どうしても助けてほしいの……」
心の底から絞りだすようにして出した声は思ったよりも震えてしまった。
それを聞いた樹は自分が持っていたお茶をテーブルに置き、あたしを睨むように見つめて言った。
「大嫌いだったのにか?」
樹は、あたしが母さんを嫌いなのを知っているから。
「大嫌いでも、だよ」
今のあたしには言葉が思いつかない。