あたしが鳥居を通った時、やっぱりへんな感じがした。
――これが異世界へ行く感覚なのかな
なんて自分を納得させてみた。
どうでもいいことを考えていないと母さんのことを思い出しそうで、怖かった。
「あった……」
あたしが夏休み中お世話になった建物。
樹がいるところ。
店の前には“営業中”の看板。
これがあるということは樹は高確立で店にいる。
入るのを躊躇していると、ある言葉を思い出した。
“大丈夫ですよ。僕がいます””
あの頼りない、先生の言葉だった。
思わず笑ってしまった。
あんたにはどうしようもできないって。
それで少しリラックスして、ドアを開けることが出来た。
「いらっしゃーい」
なんともやる気のない声が聞こえてきた。
その声は樹のものだが、彼は何かを探しているのかこちらを見ていない。
「今日はどんな依頼で――」
止まった。
「謝りたい人が、いるんです」