何か変な気分だった。
母さんの話をしている事が。
「傷ついているのは佳奈さんだけではない、ということをわかっていただけませんか?」
岡崎先生はどこまでも優しかった。
あたしに決して強要や、命令をしなかった。
だから、
「知ってます。母さんがあたしに“生まなきゃよかった”って言うたびに傷ついて、ぼろぼろになってたのは」
あたしは本当のことを言った。
岡崎先生が驚いていた。でもあたしは話を続ける。
「知ってるんです。確かに料理を作ってくれないし、洗濯もしてくれないし、話をすれば生まなきゃよかったっていうけど、あたしを追い出そうとした事はないし、学費を振込むのを忘れたことも無いんです」
そう。
母さんは何もしてくれないけど、あたしが育つことはできた。
「一度も学校行事に来たことは無いけど、絶対に誕生日は忘れたことはないんです。“今日、あんたを生んだのね。気の迷いだわ”とか言うけど」
わかりにくい“おめでとう”。
「分かってたんです、でも、やっぱ辛かった!生まなきゃよかったなんて、言ってほしくなかった!」
とうとう涙が溢れた。


