毎日聞いた。

元崎のへたくそな歌。

誰がなんと言ってもゆきはこの歌で元気になれた。

まっすぐに自分の気持ちを伝えるこの歌。

ゆきは自分の気持ちを歌に託した。

元崎。信じて。私あなたが好きなの…

必死に歌っていると、急に元崎に腕を引かれた。

「わっ!」
抱きしめられたとわかったのは、汗ばんだゆきのシャツに元崎の体温が伝わってきてからだった。

「ありがとう。」

耳元で聞こえる元崎の声。

「俺も好きだよ。川島」

「えっ…」

「すっげー嬉しい!」

元崎はゆきを抱きしめる腕に力を入れた。

「ほ、本当に…??」

「なんなら俺も歌おうか?」

「え!い、いい!」

思い出すとゆきは恥ずかしくなった。

「完全に俺のこと眼中にないもんだと思ってた。」

「私だって!嫌われてると思ったから…。」

「好きだよ。ずーっと好きだった。」

ありがとう

元崎はそう言って笑った。

ゆきが大好きな元崎の笑顔。

明日も明後日も、その先もずっとこの笑顔に会える。

「私も!」

そう言って、今度はゆきの方から元崎を強く抱きしめた。