「毎回来てもらって悪いな。」

ライブ後、自転車で帰るという圭と別れ、元崎と2人電車に乗っていた。

「そんなことないよ。なんかおもしろいし。」

「楽しんでくれてんならいいけど。」

外はもう真っ暗だった。

帰宅ラッシュの時間帯も過ぎて、電車内は空いていた。

「でもさ、なんで路上ライブなんて始めたの?歌手目指してたっけ?」

「まさか。そんなわけないだろ。」

「じゃあ何で?」

「んー。なんて言うか…練習かな。」

「練習?」

「そ。文化祭でさ、ライブコンテストがあるんだよ。
それに出ることになったから。その練習。」

「へー!そんなのあるんだ!」

「2人以上のグループで、優勝者には1ヶ月食堂無料券が貰えるんだよ。」

「それが狙いなんだ。」

おかしくてゆきは笑った。