「あ~あたし、マルキューで、お洋服買うの、夢だったんだ~ね~香奈恵、地下から見る?」


純一郎、いや、今日から、凛子か。

凛子は、嬉しそうに、マルキューの中へ入って行く。


「り、凛子~おじさんやおばさんとは、話せるようになったの?」


「うん、母さんは、理解してくれた。父さんは、いまだに、口きいてくれない。」


「そうなんだ…」


ひとしきり、凛子の買い物に付き合った後、私たちは、東華ホテルで、お茶することにした。


「父さんは、『昭和の人』だからね、頑固なのよ」


「ちょっと、凛子、何言ってんのよ!『昭和の人』だぁ~
私もその、『昭和の人』なんだけど!」


私は、確かに、昭和63年の1月5日生まれだ。

だけど、凛子は、その3日後の平成元年 1月8日に生まれている。

つまり私たちは、同じ年だけど、昭和63年1月7日の『昭和天皇の崩御』を隔てて、生まれた時代が大きく違ってしまったってことだ。


「あと、3日早く生まれてたら、凛子だって、『昭和の人』だったんだからね」