それから、なんの進展もないまま、一週間が過ぎた。


『香奈恵、今日、暇?』


純一郎から、メールが来た。


買い物に付き合って欲しいんだという。

考えたら、純一郎にとって、確かに私は、唯一の女友達なんだ。


私が、午前中、渋谷でバイトがあったので、マルキュウの前で待ち合わせることにした。

「香奈恵!」


「えっ」


名前を呼ばれて、その方向に目をやると、スラッとした綺麗な子が立っている。


「純一郎」


「い~え、今日から、椎名凛子です。宜しくお願い致します」

名前だけじゃない、姿形が、すっかり女の子になってる。

元々、体格は、どちらかと言えば、細身で、あまり、男男してなかったけど、女装したら、ここまで、変われるのかと思うほどの変わりようだ。


「凛子」


「そうよ、いい名前でしょ。これからは、名前のとおり、凛として生きて行くのよ!」


「…………」


高校は?

ご両親は?

その他諸々、聞きたいことは、山のようにあったけど、私は、その時点で、すっかり、凛子に飲み込まれていた。