「香奈恵ちゃん、お母さんと話さなくて、良かったの?」


「いいんです。話すことは何もありませんから。それより、この先もまた、お世話になることを思うと心苦しいです」


「何言ってるのよ!香奈恵ちゃんがいてくれて、私も主人も、もちろん凛子だって喜んでるんだから。遠慮しないで、いつまでもいてくれていいのよ。おじさんなんか、ここから嫁さんに行けばいいんだって言ってたんだから」


「おばさん、ありがとう」


「それとね、香奈恵ちゃん、これ、預かってたのよ」


「預金通帳?」


「そう、満期になった学資保険を預金してたんだって」


「お母さん、あなたのこと忘れてたわけじゃないのよ」


「…………」


「香奈恵ちゃん、これで、来年、進学しなさい」


「なら、おばさん、これを私の食費に当てて下さい」


「何言ってるの、これは、進学のためにとっておきなさい」