「純一郎、高校は、どうするつもりなの?」


「母さんは、高校だけでも卒業してくれっていうんだけど、もう、無理…無理なの。学校へ行こうと思っただけで、気持ち悪くなるし」


「そうか……でも、お父さんは、許してくれないでしょ、あれから口きいてくれた?」


純一郎は、首を小さく横に振った。


「退学するっていっても、そのあと、どうするの?働くの?」


「…………」


純一郎の家は、いわゆる旧家で、江戸時代後期から、代々、続いた大地主なのだそうだ。

純一郎が生まれた時も跡取り息子ができたと、それは、それは、大騒ぎだったらしい。


初節句の時には、あまりにも大きな鯉のぼりを上げたため、少々の風では、泳がなかったのだそうだ。


「台風でも来ない限り、泳がないだろうよ」

ご近所のつねばあちゃんが、まるで、予言者のように、つぶやいた。