ニューハーフ物語

封筒には、便せんが、たった1枚入っているだけだった。

そこにもたった2行、
あっけないくらいの内容だった。


[もう、疲れました。家を出ます〕


「うそ……うそ、うそ、うそ!」


香奈恵の大きな目からみるみる涙が溢れだした。

そして、突然、糸が弾けて切れた操り人形のように、その場にドサッと崩れ落ちた。


押し殺したように肩を震わせて泣く香奈恵をあたしは、ただ、じっと見守るしかなかった。