その内、店内がお客で混みだしてきた。

入り口近くの専用の椅子席で、待つ人もでてきた。

私たちは、もう、すっかり、食欲も失せて、ほとんど食べずに店をあとにした。


一体、どうしたというんだろう。あの生真面目なおじさんが…


浮気


「凛子、どうする?」

「…帰ったら、父さんに直接、聞いてみるよ」


「直接」


「だって、このままにしておけないでしょ」


凛子は、白か黒か、はっきりしないといられない性格だ。


「おじさんに、ストレートに聞くわけ?」


「うん、母さんに知られないうちに、私が、なんとかしようと思ってる」


凛子は、頑固だ。いっぺん言い出したら、誰がなんと言おうと、自分の意志を曲げたことがない。

その、きしゃな体には、到底、不似合いな性格だ。