私と翔太くんは帰る方向が一緒みたいで、2人並んで同じ方向に歩き出す。


「付き合ってる奴らって、どんなこと話しながら帰ってるんやろ。稲瀬に何も考えずに素でいけって言われたけど、なんや緊張しすぎていつも通りとか無理やわ」

ハハッ、って渇いた笑いをこぼす翔太くんにまた緊張が蘇る。


「じゃあ、お昼はずっと私の話だったから、今度は翔太くんの話を聞かせてほしいな」


翔太くんは有名で、転校してきてすぐに存在を知った。

女の子たちと恋ばなになると絶対と言っていいほど稲瀬くんと翔太くんの名前が出るし、2人が私の教室に遊びに来たらみんな声変わるし。


でも、私の知る翔太くんはいつも第三者から見た情報でしかなくて、実際のところ、翔太くん自身はあんまり知らない。


「オレの話、か…。ほんまバスケしか語れんような人生おくってるけど、それでもいい?」

コクン、と頷く。

それから私の家に着くまで翔太くんの中学時代や高校に入ってからのことを相槌をうちながら聞いていた。

伝わってきたのは翔太くんのバスケに対する熱い思いと、稲瀬くんとの仲の良さだった。


話している間ずっと目がきらきら輝いていて、ほんと私みたいな地味な子が隣にいていいのかな、って思った。


「あ、翔太くん!私の家ここなの」

「ほんまか!…ごめんな、実結。バスケのことしか語れんくて、退屈やったやんな…」

しゅん、っていう効果音が聞こえてくるくらいしょぼんでいる翔太くん。


「そんなことないよ!!ほんとにバスケ大好きなんだね。私にはそんなに打ち込めるものがないから、羨ましいよ」


思ったことを言うと、翔太くんはちょっと驚いた顔をしていた。


「実結も、なんか見つけたらいいやん!」

「私には無理だよ。翔太くんみたいに身体能力高くないし、センスもないし、」

「そんなん無くたって、実結は頭いいし、優しいし、か、かわええし!」


話がズレてきてるけど、そんなの気にしてられない。

翔太くんの顔が赤くなるのを見て、私まで顔が熱くなる。


他の人から見たら、バカップルに見えるんだろうな。


恥ずかしくなって「じゃ、じゃあまた明日!」って言って家に入ろうとしたとき、腕をつかまれた。

「あの、さ…アド教えてくれへん…?」

そう言えばまだ、アドレス交換してなかった。

「まだ交換、してなかったね、じゃあ送るね!」

赤外線でいい?って聞きながら、ケータイを近づける。

画面には送信完了のメッセージが表示された。


…手が、震えた。