授業が始まって10分ちょっと。
集中できるはずもなく、私はさっきの出来事を思い出していた。





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「あ、与鈴鳴ってもたな。そろそろ帰ろか!」

「あ、うん、そうだね」

「…なぁ、オレたち一応付き合うんやし、桐島さんやのうて実結、って呼んでもいい…?」

「うん、いいよ!じゃあ私は翔太くんって呼ぶね」

「くんづけとか別にええで?」

「なんか慣れなくて。だめ、かな…?」

「(かわええ…)全然大丈夫や!!じゃあこれからよろしくな、実結!」

「うん!よろしくね、翔太くん」

「なんや気恥ずかしいな。あ、今日からテスト一週間前やからちょうど部活ないねん。せやから一緒に帰らん…?」

「(付き合ってるんだもん、ね)そうだね、帰ろっか!」

「(うぉぉおっしゃあ!!)じゃあ放課後迎えにいくから教室居ってな!そろそろチャイム鳴るし、教室まで送るわ!!」





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…だめだ、思い出しただけで顔が熱くなるのがわかる。



授業に集中するのを諦めて、私は5、6限を何も考えないように努めた。