「俺の名前は本郷 影琉(ほんごう かげる)です。2-2、出席番号は26番です。」

「私の名前は_「知ってます。樹崎 吾妻(きざき あづま)サンですよね。2-2、出席番号8番の。」

その男の子、…本郷君はそう言うと、私の手を取った。

「断りますか。俺の告白。」

「えぇ。だって私はあなたのこと、何も知らない。興味もないわ。」

「ならさっきのは告白なんかじゃなく、‘契約‘だと捉えてください。」

「っ…けい…やく…?」

「そうです。俺は正直、女性にモテるのが嫌で仕方ありません。
それは貴方にも言えることです。
毎回毎回、相手を傷つけることに罪悪感を感じつつあるじゃないですか。
だから、この‘契約‘を交わせばいいんです。
そうすれば貴方は相手を傷つけずに済む。
俺は‘告白‘という面倒事から開放される。
…一石二鳥じゃないですか。」

冷たい指が、絡みつく。

「でも、それでも告白してくる子がいたらどうするの…?
私、そんなの嫌よ。契約の無駄だもの。」

「それは絶対にありません。
仮にも俺達二人は
『学校の中でも隋を抜く』モテモテ女子、男子です。
その二人がくっついてしまったら大抵の人は勝ち目がないことが分かり、
諦めます。」

「っでも、!!」

言いかけたとき、私の唇に人指し指が触れた。

「まだ、…なにかあるんですか。」

本郷君はそう言うと、親指で私の唇を撫でる。

「…安心してください。頷いてしまえば貴方はもう断らなくていいんです。
誰かが傷つく事は、もうなくなるんですよ。」

本郷君はそう言うと、私を抱きしめた。