「優羽さぁ...」
「ん?」
沙絢は机に頬杖を付き、ハンバンガーを加えて眉間にシワを寄せている。
チーズが垂れ出ていて、今にも口から溢れそうなハンバンガーは、一度机に置かれた。
一方ポテトを加え、首を傾げたあたし達がいるのは駅のワック。
通称“駅ワ”。
学校が終わり部活の休みな月曜日あたし達は恋バナに花を咲かせていた。
「あんた、杉の事好きなんじゃない?」
突然の発言。
あたしは一瞬『へ?』とか思いながらも、意味を理解していなかった。
「どういうこと?」
口の中に広がるポテトの塩気が、戸惑う喉を刺激する。
「だからー、優羽。さっきから杉の話ばっか」
「え?」
思わず、やば。
と、意味が分からないのに焦ってる自分がいる。
「優羽が好きなら応援するよ」
沙絢がいつの間に食べ終えていたハンバンガーの包みを無惨にも破りながら微笑む。
ピンクな話に少し“きゅん”と胸が音色を奏でた。
「好きなのかなぁ...」
「多分ね」
愛想なしに沙絢が笑う。
この時からあたしの好きな人は良君。
それが間違いだったかは、今も分からないまま。
ただポテトの塩気が甘味のかかった胸に嵐を予想させる事はなかった。