私が歩きだすと、紫園も後ろからついてきた。


教室に残されたのが、彩華と紫園だけになった。



その空間は、重く、優しかった。




「彩華。」

紫園がそっと呼ぶ。


彩華は窓を閉めていた。



「気持ち伝えないままじゃ、誰かに取られちゃうよ?」

静かに、でもはっきりとそう伝えてきた。


「・・・・。」


窓を閉める手を止める。


「誰かに取られたら、それこそ気持ちが伝えられないんだよ?!好きでも伝えられないんだよ?!」

「・・・。」


「今がチャンスなんじゃないの?!今伝えなきゃ終わっちゃうよ!!!」

紫園が肩に両手を置いて揺すってきた。


私が逃げてることは、自分でもわかってる。


でも・・

「振られたら?」

「ぇ・・?」

静かに小さな声で私がそう言ったから、紫園の耳まで届かなかった。